フランクリンメソッドがバレエにどう生かせるのか?という質問を受けたとしたら「全てにおいて」と答えます。
フランクリンメソッドはダンサー、振付家の経歴を持つ創始者エリック・フランクリン氏が、同じくダンサー、パフォーマー、武道家、そして治療家としての経験も持つモートン・ディスマー氏とともに、自らの経験や疑問を元に研究を重ね開発してきたメソッドで、基礎や技術のレベルアップだけでなく、表現力、身体のメンテナンス、メンタルのコントロール、さらには教え方や練習の仕方においても新たな引き出しを増やしてくれるものです。
事前にワークショップなどを受けることなくプロトレに参加した私は、フランクリンメソッドは骨や筋肉など解剖学的な事を学ぶことがメインだと思っていましたが、驚いたのはその教授法でした。今でもフランクリンメソッドってどんなもの?と聞かれるとうまく説明しきれない感じがするのですが、それはフランクリンメソッドが今まで出会った事のない、他にないものだからです。
イメジェリーという脳と身体を結びつける方法は、感覚的なことを教える時、伝える時の大きな裏付けとなり、機能解剖学では関節の位置や骨の動きなど、正しい解剖学を脳と身体の両方で体験することができます。
バレエでは「お腹・お尻を締める、引き上げる、頭を遠くに、背骨を真っ直ぐに、床を押す」など定番となっている注意事項が多くありますが、それらの言葉が解剖学的にどういうことを意味しているのか、もしくは解剖学的に正しいからというよりは感覚的な助けとして表しているなど、フランクリンメソッドの学びを通して紐解いてきました。
●自分で考えることを身につけると、自分の変化に気付くことができます。そして変化への喜びが更なる向上心を生みます。
●自分で気付いた事だけでなく、先生に注意された事もイメジェリーを使って消化することで、一時的に直すのではなく、クセを修正した新しいやり方を身体に浸透させることができます。
●集中力・注意力や身体の潜在能力を高めるはたらきかけをすることで、基礎や技術の向上だけでなく、怪我や故障から身体を守ることができます。
●自分の助けになる考え方を学ぶことで、モチベーションや精神状態をコントロールできるようになります。
私が日本でバレエを教えた期間はまだたった10年ほどですが、日本の生徒さんは本当に皆さん努力家です。その努力が効率よく成果に結びつくようサポートしたい、怪我や故障を少なく長く踊って欲しい、これらの思いが私をフランクリンメソッドに出会わせてくれた様です。
苦手、できないと思っていたことが自分にもできると気付いた時の笑顔、自分で考える事を身につけ、次は自分で解決できるという自信に満ちた顔、そんな輝くダンサーの力になれるようサポートしていきたいと思います。
フランクリンメソッド公認エジュケーター 十河志織
5歳でバレエを始め、16歳でドイツへ留学。翌年に両足首の手術を受ける。18歳からドイツ・スイスの国立バレエ団でソリストとして活躍するものの、常に怪我や痛みに悩まされる。プロとしての活動を続けて5年目、再び足首の手術を受けるが失敗。感染症や軟骨の損傷、関節の変形などがあり、手術や治療を続けるが改善されず、引退を決意する。ドイツの学校でバレエの教授法を学んだ後、帰国し後進の指導にあたる。現在、フランクリンメソッドを生かしたダンサーや指導者のサポートを行っている。