卓越したムーブメントエジュケーターとは、どんな人でしょうか。
生徒やクライアントが、自分の動きをよくするためにどうすればいいかわかり、わかったことを自分で再現できるように、必要なことを適切に教えることができる人。動きを学ぶことはわくわくする経験で、よりよい動きがいかに動きの楽さや心地よさを増し、楽しいかを伝えることができる人。
動きの改善、向上を目的としたときに、動作を繰り返すことはよく行われており、実践なしに向上は見込めませんから、訓練を重ねること自体は間違いではありません。しかしながら、単に反復するだけで向上が約束されるわけではなく、変化がなかったり、場合によってはからだを傷めたり怪我をしてしまうことさえあります。そんなときに起こっているのはおそらく、緊張度が高いか、コーディネーションが取れていないといった状況でしょう。このまま続けていると、からだのどこかの部位が固くなり、痛みが出るかもしれません。これは、当人が学習し、自分のものにした動きの癖と、機能的で効果的な動きが一致していないときにおこります。
こんな現状を前にしたとき、ムーブメントエジュケーターが『からだはどのように動くように設計されているか』を知っていないと、できる助けは限られるでしょう。この理解があった上で、適切な教え方、キューイングができてはじめて、生徒やクライアントが全ての側面において健康になっていく助けが可能になります。
生じた問題の対処法として、筋肉のストレッチや強化、場合によっては痛み止めの処方は広く行われていますが、フランクリンメソッドはこれらにとどまらず、問題の根源を探し、見つけ、変えていく行為を加えることを提案します。問題を生じさせている原因が変わらなければ、また同じような症状が出てくる可能性は大いにあるからです。
フランクリンメソッドでは、からだの内側のムーブメントの中でも特に骨格にフォーカスし、動く時にいかに骨どうしが連動し、シンクロしているかに着目してきました。これをフランクリンメソッドでは『ボーンリズム』といい、からだ全体に動きを伝える筋膜ネットワークの中で、どのようにして適切な骨どおしの連動が理想的なサポート、力の吸収、エネルギーの保存に寄与しているかの理解と、その実践に活用してきました。
からだはどのように機能するように設計されているか(どのようにはたらくようにできているか)の“情報”を得られたら、次は、どのようにして情報を受け手の経験にしていくかを知る必要があります。フランクリンメソッドでは、これを『体現のペダゴジー(教育法)』と名付けて30年前から開発を重ねてきました。これには、以下のような内容が含まれます。
キューイングの教育
目的を設定し、適切なイメジェリーやフィードバックタイプを使って求める方向に向かいます。
自覚の教育
フランクリンメソッドでは『よりよい情報はよりよいナビゲーションを生む』という言い方を使っており、いかに身体から脳神経への適切な刺激が、当人の自覚に、そして自己調整に繋がるかを、固有受容覚へのはたらきかけなどを通じて実践的に教えています。
自主性の教育
ムーブメントエジュケーターが手取り足取り“修正”する、あるいはトップダウンの教え方をしている限り、生徒やクライアントの自主性は育たず、エジュケーターへの依存度が高まるものです。“わかっている”エジュケーターが、“わからない”生徒に教えるものだという捉え方の代わりに、エジュケーターは適切な“プロセス”を伝え、当人がそれを行って発見したことがあってはじめて、“自分でわかる”という体験が生まれます。
体現できたことを教える
卓越したムーブメントエジュケーターは、姿勢、呼吸、ムーブメントが本来の機能を使えて(体現できて)おり、加えて望む状態にマッチした声、言葉の選択、態度でデモンストレーションや指導ができている必要があります。エジュケーターの体現が、生徒自身の体現を助けるからです。
卓越したムーブメントエジュケーターのゴールは、生徒やクライアントの動きやスキルが何であれ、その時点でのベストなムーブメントを、当人が自分でできるように指導することです。昨今は多くの情報が入手可能ですが、得た情報をいかに生徒の動きの向上に役立てられるかについての見極めと訓練なしに、情報が生かされることはないと言っても過言ではないでしょう。
ここで紹介したフランクリンメソッドの『体現のペタゴジー』を身につけるためには、一定の訓練期間が必要です。フランクリンメソッドが開催しているプロフェッショナルトレーニングは、これらを身につけるために開発された、世界でも唯一の包括的な、卓越したムーブメントエジュケーターを育成するプログラムで、世界各国で教えられているのと同じ内容が、日本でも学べます。