フランクリンメソッド用語解説

フランクリンメソッドは、1980年代後半にスイスで産声を上げて以来西洋各国に広まり、日本に入ったのは1990年後半です。革新的なムーブメントの教授法の概念を反映したフランクリンメソッドの用語のいくつかを、ご紹介します。

ボーンリズム Bone Rhythm

からだが動くということは、骨、筋肉、筋膜、そしてこれらをガイドする神経系統が関わる、とても複雑な3次元のプロセスがはたらいているということです。

これら全てを科学的に解明しようとするのは至難の業ですが、動く時のからだの中の骨の連動にフォーカスすると、複雑なプロセスがわかりやすくなります。

空間上でからだが動いている時、動きを伝える筋膜システムの中で、なぜどのようにからだの中で隣り合った骨が動きあっているかを理解することができると、動きの向上に役立てることができます。

フランクリンメソッドでは、この骨の連動を使ったアプローチを『ボーンリズム™』とよび、安全で効率のいい動きをつくるための方法としてからだの各部位に用い、効果を上げてきました。

例えばオリンピックのバスケットチームがボーンリズムを使ったジャンプを学習したことで格段にジャンプ力が高まったり、バレエダンサーがボーンリズムを使うと動きやすさが増したりと、どんな動きの向上にも使えるのがボーンリズムです。

ダイナミック・イメジェリー Dynamic Imagery

歩いている時、何かをつかもうと手を伸ばしている時、ボールを蹴るなどの動作をするとき、それについて考えなくても動けます。こういった無意識の動作には、何らかの運動パターン、つまり癖があるものですが、何か特別な理由がないかぎり、その癖に特に意識することはないでしょう。

ところが、ダンスやスポーツなどの特定のスキルを高めたい、からだに不具合や痛みを感じる、あるいはムーブメントを人に教える立場にいるなど、理由は様々であっても、動きを現状よりもっとよくしたいと思う時に、人は動きの癖に注目し、動きを向上させようとします。

では、どうやったら最も効果的、効率的に動きを向上できるでしょう?その答えの1つは、「動いている時の、当人の考えていることを使う」ことで、これは科学的にも証明されています。

私たちは一日中何かを「考え」ながら過ごしていますが、この「考える内容」を、無意識に行っているあまりよくない癖と、望む状態の架け橋にすることができます。

簡単な例をあげると、腕を上げる、という動作をするとき、頭の中で「腕が鉛のように重い」と思いながら上げるのと、「羽根のように軽い」と思いながら上げるのでは、同じ動作でも考える内容、つまりフォーカスする対象が違います。

動きが同じでもフォーカスが違えば、当人の脳神経系統は、違う経験として記録されます。違う経験をするということは、新たな癖を形成しえるということです。

これが、動きを向上させようとしたときに、その目的に即したイメージを使うことが役立つ理由です。

フランクリンメソッドでは、30年前から、動きを向上させるためにイメージを使うことを『ダイナミック(動的な)イメジェリー』とよび、ムーブメント界ではイラストレーションをはじめとした様々なイメージや、頭のなかに浮かぶイメージを選択的、効果的に使うエキスパートとして知られています。これが、フランクリンメソッドのイメジェリー介入法を学んだムーブメントエジュケーターの教授法が、とても効果が高い理由の1つです。

ダイナミック・アラインメント(動的整合性)Dynamic Alignment

人は、姿勢をどのように保っているのでしょうか。一般的には姿勢といったとき、ある特定の位置だと思われていることが多く、正しい姿勢をとるために、例えば肩を引いてとか、頭をどの位置にするといったアプローチがよく用いられています。

しかしながら実際は、からだは ”動き” を使って、ある姿勢やアラインメントを維持しています。例えば、立っているときにからだは全く動いていないわけではなく、わずかに揺れつづけています。からだのある部位を動かすときには、姿勢を保つために、その動きに対してバランスを取る動きが必ずおこります。

股関節を曲げて前に体を倒すとき、最初におこることは、バランスをとるために骨盤が後ろに動くことです。私たちが歩くときは、胸郭と骨盤が互いにバランスを取りあうよう、設計されています。この現実の中で、ある部位が動かなかったり、あるいは固めたりすると、本来の機能がはたらかなくなります。このように、ダイナミック・アラインメントという捉え方は、からだは姿勢、動き、安定性をダイナミックに(動的に)つくっているという理解に基づいています。

1996年に初版が発行された創始者エリック・フランクリンの著書に同名のものがありますが、フランクリンメソッドでは、早くからアラインメント(整合性)は、本来、動きのなかに見出されるべきであることをお伝えしてきました。

機能の体現 Embodiment of Function

フランクリンメソッドでは、本来からだはどのように機能するようにできているかをまず、学びます。私たちのからだがよくする動きと言えば、歩くこと、立つこと、しゃがむこと、走ること、物を持ち上げたり運んだりすること、これに加えてより特化された動きとして這う、泳ぐ、よじ上ることなどがあげられます。
からだ本来のはたらきができているとき、フランクリンメソッドでは『機能が体現されている』という言い方をします。

生活の利便性を追及してきた現代社会での生活は、昔のような毎日の動きが少なくなり、本来のからだの使い方ができなくなっていることが多くの問題を生んでいます。

フランクリンメソッドは、ダンス、エクササイズなどの特定のムーブメントを行う前に、動きの基本を学び、それを身につける土台作りからはじめることを提案しています。本来の機能が理解でき、それが身についている、つまり体現できていることは、全てのムーブメントエジュケーターの必須条件ではないでしょうか。

この理由から、フランクリンメソッドでは上記であげたような日常動作の中での機能の体現がどのようにできるかを学んだ上で、体現の落とし込みの機会として、体全体、あるいは各部位にはたらきかけるエクササイズがあります。

ムーブメントエジュケーター Movement Educator

ムーブメントエジュケーターという言葉は、動きの向上を目指した教育や指導に関わる、全ての人を指しています。
ピラティス、ヨガ、フィットネス、ジャイロなど特定のエクササイズのインストラクターや、スポーツ、ジムのトレーナー、ダンス教師、振付師、学校の教員などがまず頭に浮かびます。

加えて、理学療法士、作業療法士、柔道整体師、助産師、ロルファー、あんま指圧マッサージ師、整体師、ボディーワーカーなども、動きの向上という観点からクライアントと関わることから、ムーブメントエジュケーターであると言うことができます。

また、ダンサー、シンガー、アクター、ミュージシャンなども、からだはどのように動くのか、どのようにすればもっとよく使えるのかを探求しており、いわば自分自身のムーブメントエジュケーターと捉えられます。

フランクリンメソッドは、動きの向上を目指す全ての人が学び、身につけるべき基本を教えています。からだの動きがより自由に、楽になっていくことは、万人の望みだと言っても過言ではないでしょう。この同じ目的を共有する様々な背景を持つ人々が、フランクリンメソッドを活用しています。

FM独特の表記 FM terms

フランクリンメソッドでは、普段あまり聞くことのないカタカナ表記が登場しますが、その代表的なものをいくつか。

「イメジェリー」という言葉は、「イメージ」と似ていますが、フランクリンメソッドでは“動いているときに頭の中に思い浮かぶこと全て”を指し、効果的な変化をもたらすために特定の方法を用いています。

「エジュケーター」とフランクリンメソッドでは表記していますが、通常は「エデュケーター」と書かれていることが多いです。検索をかけるとどちらも同じ言葉として認識されているようですが、英語を母国語としている人がカタカナの「エデュケーター」という言葉を聞くと違和感があると言われることも多く、英語発音により近い「エジュケーター」を採用しています。

普段、何気なく使っている言葉のなかには、特定のイメージがあらかじめ含まれているものがあります。例えば「衝撃吸収」という言葉はよく使われていますが、フランクリンメソッドでは「衝撃」という言葉で連想する状態が動きの向上に必ずしも助けにならない可能性があるとし、代わりに「力の吸収」と言っています。ちなみに、「衝撃」は英語でSHOCKです。

このように、フランクリンメソッドでは他では見られない独特の言葉を使うことがありますが、その理由は動きの向上により有用であるという一貫性を持っています。

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